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ケーブルは音を変えるのか?実測で答えを出しました

自社の Purity CHP-12B(1.2 m)を多ユニットのイヤホンにつなぎ、10 周波数点で実測しました。音量への影響は 0.27 dB、バランスの変化は最大 0.14 dB。

測定日: 2026-11-04

問いをそのまま書きます。ケーブルを替えたら、音は変わるのでしょうか。 自社の Purity シリーズ、CHP-12B のケーブルで確かめました。専門的な言葉は使わず、数値をそばに置いてお話しします。

結論から

ケーブルが再生機からイヤホンへ向かう信号に対してすることは二つだけです。少し受け取ること。そして、その受け取り方が周波数によってわずかに変わること。このケーブルではどちらも小さく、二つ目の影響は人が聞き分けられる範囲を下回りました。

  • 音量。 ケーブルをつないだ状態では、1 kHz でおよそ 0.27 dB だけイヤホンに届く量が減ります。これは音色の変化ではなく音量の設定のことで、つまみを少し上げれば消えます。
  • バランス。 帯域全体で見つけたいちばん大きな変化は、10 Hz で +0.14 dB、15 kHz で −0.14 dB です。曲線全体は、高低合わせて 0.28 dB の中に収まります。
  • いちばん耳が敏感なところが、いちばん動きません。 2 – 8 kHz では、変化は 0.04 dB 未満です。
  • 左右の差。 同じケーブルの左右のチャンネルは 7.1 mΩ 違いますが、耳への換算はおよそ 0.008 dB。差とは言えない大きさです。
  • ものさしとして: 純音だけで他に何も鳴っていない聴き比べでは、人は約 0.5 dB の差なら気づけます。こちらのいちばん悪い数値はその 3 分の 1 より下、いい数値は 15 分の 1 ほどです。

この下にある四つの数字は同じ結論の省略形で、もう少し下のグラフはそれを一枚にまとめたものです。ケーブルがバランスをどう変えるかと、人が気づき始める線とを並べて示しています。

バランスの最大変化
0.14dB
1 kHz で減る音量
0.27dB
左と右の差
0.0077dB
人が聞き分けられる差
0.5dB

測定の内容(専門用語ぬきで)

ケーブルは自社の Purity CHP-12B を一本。1.2 m、4 芯、イヤホン側は 2Pin 0.78 mm FLAT、再生機側は 4.4 mm バランス(5極)です。イヤホンは実験室で基準として使っている多ユニットの機種です。機種名はこのページには書きません。他社製品との比較ではなく、自社の測定だけを公開することにしているためです。

電気的な振る舞いを 10 Hz から 20 kHz まで 10 周波数点で読み取りました。対象は四つです。芯を 1 本ずつ、ケーブルを左右それぞれの回路として、そしてイヤホンにつないだ状態を左と右に分けて、です。測定器・方法・条件は 測定のページに書いています。

この数値をどこまで信じていいかに関わる話を二つ、先にしておきます。

  • 測ったのは 量産前の試作ケーブル 1 本です。測定日は 2026 年 11 月 4 日。
  • 2026 年 10 月に測った回では、測定点が 15 kHz のはずなのに 15 Hz に設定されていました。見つけたので、その回の数値はこのページに載せていません。ここにあるのは訂正後の回だけです。

ケーブルがあまり変えられない理由

ケーブルとイヤホンは、同じ信号を二つで分け合います。電気的な圧(電圧)を、抵抗の大きいほうが多く受け取る組み合わせだと考えてください。

帯域の中央で、ケーブル自身の抵抗はおよそ 0.24 Ω です。イヤホンのほうがずっと大きく、しかも周波数で大きく動きます。10 Hz で約 15.8 Ω、1 kHz で約 7.7 Ω、20 kHz で約 5.2 Ω。そこでケーブルの取り分は、低域で 1.6%、中央で 3% 前後、高域の端で 8.5% になります。この先の話は、ほぼすべてこの取り分の形の話です。

もう一点。電流が行って戻ってくるループは、コイルと同じように、ゆっくりした変化より速い変化を少し強く拒みます。20 kHz まで行くとケーブルの抵抗は 0.24 Ω から約 0.44 Ω に増えます。この増え方と、同じ周波数でイヤホン側の抵抗が減ることを合わせたとことが、高域の低下の正体です。

これは「このケーブルは透明です」「中立です」という主張ではありません。電源を必要としない部品が、ごく少量の信号をどれだけ受け取れるかという、算数の話です。

ケーブルが信号を受け取る量

これは一番ふつうの話で、他のすべてが小さくなる理由です。ケーブルの取り分は、音楽の中身が最も濃い帯域の中央で 3% 前後のまま。イヤホン自身が駆動しやすくなる高域の端で、少しずつ上がるだけです。

このグラフから覚えておいていただきたい数字は二つ。1 kHz で 3.1%、20 kHz で 8.5% です。信号の 3% を受け取るケーブルが、音の色を塗り替えることはできません。できるのは、端を少し整えることです。

折れ線グラフ。このイヤホンに対してケーブルが取り取る信号の割合は、周波数によって 1.6% から 8.5% の間。
ケーブル自体が信号のうちどれだけを受け取るか。イヤホン自身のインピーダンスは高域で下がるので、ケーブルの取り分は高域になるほど少しずつ増える。

バランスへの影響

全体の低下は主役ではありません。どの周波数でもほぼ同じで、音量のつまみが埋めてくれるからです。主役は、ケーブルが 周波数によって何を変えるか という点で、そこに音色を変える余地があります。

グラフの読み方です。

  • 曲線は 0 の近くにはりついています。いちばん高いところで +0.14 dB(10 Hz)、いちばん低いところで −0.14 dB(15 kHz)。そして 200 Hz から 5 kHz の、音楽の中身が最も多い平坦な帯域を横切っています。
  • 低域は持ち上がります。減るのではありません。 信号に何も足されてはいません。10 Hz ではイヤホンの抵抗が約 15.8 Ω まで上がるので、ケーブルの取り分は 1.6% に下がり、損失が小さくなります。1 kHz と比べたとき、損失が小さいことは「持ち上がり」として見えます。
  • 高域は少し減ります。 15 – 20 kHz でイヤホンが約 5.2 Ω まで下がる一方、ケーブルは 0.36 – 0.44 Ω に増えているためです。
  • 原因をはっきり書いておきます。 高域のこの傾きは、主に このイヤホンの 抵抗が周波数で下がることです。ケーブル単体の働きではありません。そこに 4 – 30 Ω のただの負荷に置き換えると、ケーブル自身の傾きは 20 kHz で 0.03 dB 未満になります。
  • タイミングも同じくらい小さいです。位相は 5 kHz まで 0.31° 未満、20 kHz で 3.9°。時間に直すと約 188 ナノ秒で、人が左右の耳のタイミング差に気づくとされる約 10 マイクロ秒よりずっと小さいです。
折れ線グラフ。ケーブルがバランスに与える影響は帯域全体で 0.14 dB 以内。破線で示した「人が聞き分けられる 0.5 dB」より大きく下回る。
ケーブルが低域と高域のバランスをどう変えるか、1 kHz を基準にした値。破線は、純音で人が確実に聞き分けられる最小差。

帯域で区切ると

同じ結果を帯域で区切ったもの。曲線より判断しやすい形です。

どの帯域も閾値には近づきません。耳が最も気にする 2 – 8 kHz は、その 7% です。

社内の報告書には 20 – 40 kHz も載っていますが、このページからは外しています。大人の多くはあの高さまで聞こえないことと、その範囲の一つの点が内部でつじつまの合っていなかったことが理由です(下の「この数値がカバーしていないもの」参照)。

棒グラフ。周波数帯域ごとの最大影響。すべての帯が人が聞き分けられる 0.5 dB を下回っている。
同じ結果を帯域で区切ったもの。耳が最も敏感な帯域(2 – 8 kHz)では、ケーブルの影響は聞き分け下限の 7%。

左右について

四本の芯を 1 本ずつ測ると、一本だけ他の芯と違う振る舞いをします。

1 kHz で三本は 121 mΩ 付近に並び、四本目は約 6.5 mΩ 低い位置にいます。この一本が、左右の回路を 7.1 mΩ 違わせる原因そのものです。そしてこの組み合わせでの 7.1 mΩ は、耳への換算で約 0.008 dB。人が聞き分けられる大きさの約 1.5% です。測ったすべての周波数で左右差は同じ値なので、読み取りのばらつきではなく、製造に固定された差です。

つまり、これは聞こえる問題ではありません。製造のばらつきの問題で、直すのはこちらの側です。6.5 mΩ の差は、銅が約 8 cm 足りないことと同じくらいです。手順は、切り出し長さのばらつきを抑え、その芯のはんだと圧着を点検することです。

ここは言い過ぎないために正直に書いておきます。ケーブルの左右がどのくらい近ければよいのかを決めた規格はありませんし、存在しない規格を勝手に作って仕様として書くことはしません。主張できるのは算数の部分だけです。自社サンプルの左右差は 0.008 dB、人が気づき始めるのは約 0.5 dB。

折れ線グラフ。ケーブルの 4 本の芯を 1 本ずつ測定したもの。3 本は近い値に固まり、1 本だけ約 6.5 mΩ 低い。
4 本の芯を 1 本ずつ測った結果。1 本だけ他の 3 本より約 6.5 mΩ 低い。左右の差はここから来ている。

仕様とのつじつま

仕様のページには 1 芯・1 m あたり 80 mΩ と載っていて、これは導体の設計から決まる値だと但し書きを付けています。このサンプルでは、完成品の芯 1 本が 1.2 m で約 121 mΩ(コネクタ含む)。コネクタと接点分として 25 mΩ を差し引くと(この 25 mΩ は 当社の見積もりで、別途実測はしていません)、銅の分は 80.1、80.6、80.1 mΩ/m。四本目だけ 74.7 mΩ/m です。

載せている数値は、四本のうち三本には合っていました。仕様のページではまだ「導体設計から決まる値」と表示しています。測ったのが量産前の試作品で、お届けする製品を測ったのと同じ主張にはならないからです。

この数値がカバーしていないもの

  • 1 本、1 読みです。 同じ作りを複数本測っていないので、ケーブル同士のばらつきはわかりません。これは 測定のページの「これから測るもの」に残したままです。
  • 量産品ではありません。 測ったのは Purity CHP-12B の量産前の試作品です。販売するロットで測り直す予定です。
  • 電気側の話で、音側の測定ではありません。 人工耳で音圧として測ったものはありません。このページが書いているのは、ケーブルが信号に何をするかまでで、実測した周波数特性ではありません。そしてイヤホン自身の個体差は、普通、ケーブルの寄与より大きいものです。
  • 10 周波数点で、スイープ測定ではありません。 点と点の間隔が広いので、間に細い共振があれば見逃します。
  • 20 kHz 超は数値を信じません。 芯は単体では実験台に平置きして測り、つないだ状態は別の取り回しで測り、高域の補正もしていないため、40 kHz では各部の値を合わせてもつじつまが合いません。社内の報告書では傾向として載せ、このページのグラフと表からは外しています。
  • 説明のついていない動きが一つあります。 四本とも抵抗が周波数とともに約 6% 下がりました。銅の振る舞いからすると逆の方向で、測定器の公称精度よりずっと大きい変化です。試験治具側のものと考えています。補正した治具で測り直すまで、このケーブルの高域抵抗について私たちは何も書きません。
  • 基準イヤホンには調音スイッチがありますが、どの位置だったか記録していません。 そのイヤホンの曲線は、そのスイッチ位置のもので、唯一の曲線ではありません。
  • イヤホンは 1 kHz で 16 Ω と表示されていますが、実測は 1 kHz で 7.7 Ω。 計算には実測を使います。イヤホンの抵抗が小さいほどケーブルの影響は大きく出るので、これは当社に不利な側へ働いています。

ケーブルを選ぶときの話

  • 完成品抵抗がこの程度のケーブルなら、音色が変わることはありません。私たちは自社の測定と方法だけを公開します。他の会社のケーブルに基準を設けることはしませんし、別の測り方で出た数値を評価することもしません。
  • ケーブルを替えて違いを感じたら、その違いは本物です。 ただ、それが銅由来とは限りません。ケーブルの取り回し(耳にかけるのか、後ろに回すのか、前に垂らすのか)、重さと硬さ、イヤホンが耳を引っ張っていないか、コネクタがちゃんと噛み合っているか——それらは音を変えうるものです。ケーブルが耳に届く四つの経路は、こちらの研究ノートに書いています。
  • 気にすべき不具合は抵抗ではなく接点です。 ガタのある接続や摩耗した接点は、銅自身より大きい抵抗を足します。しかも、体が動いたときに値まで動く。だからこそメッキの厚さを仕様として書き、ケーブルを耳で判断する前に適合を確認してくださいと呼んでいます。

数値

このページのすべての数値は、2026 年 11 月 4 日に測った一回分のデータから来ています。同じケーブルの左右を並べて載せています。「バランスの変化」は 1 kHz を基準にした値なので、全体の低下はこの欄には現れません。

下に載せている六枚の画面写真が、書き写しの元になったものです。社内の報告書そのものが必要な場合は、お知らせください:[email protected]。

周波数ごとに見た、ケーブルの影響
周波数信号に占めるケーブルの取り分 (%)1 kHz と比べたバランスの変化 (dB)
左右左右
10 Hz1.551.58+0.137+0.131
50 Hz2.162.16+0.097+0.093
100 Hz2.772.75+0.045+0.043
500 Hz3.353.31−0.017−0.017
1 kHz3.143.1100
5 kHz3.623.60−0.037−0.038
10 kHz5.035.05−0.110−0.110
15 kHz6.726.78−0.140−0.139
20 kHz8.478.55−0.132−0.129

数値の後ろにある測定器の画面

このページのすべての数値は、測定器の画面から 10 周波数点ずつ手で書き写したものです。その画面六枚を残しています。芯を 1 本ずつ測った四枚と、ケーブルをつないだイヤホンを左右別に測った二枚です。

写真に写っているのは表示部分だけです。測定器の筐体、画面内のメニュー表記、イヤホン側の識別マークは切り抜いてあります。測定器のメーカー名や型番は書きません。どこまで読み取れる器で測ったかという書き方をしています(測定のページ)。

書き写しと計算を照合したくなったら開いてください。四枚の芯の画面で見てほしいのは 15 kHz の行です。撤回した回ではこの点が 15 Hz で測されていて、かつての測定のページに、存在しなかったピークの記述が生まれたのがこの点です。

測定器の画面写真 6 枚を開く測定器の画面写真 6 枚を閉じる
  • 測定器の画面の写真。ケーブルの芯 1 本(L1)の 10 周波数点分の読み取り。周波数・抵抗・リアクタンス。
    芯 L1 — 左チャンネルの 1 本目
  • 測定器の画面の写真。左チャンネルの 2 本目の芯(L2)の 10 周波数点分の読み取り。
    芯 L2 — 左チャンネルの 2 本目
  • 測定器の画面の写真。右チャンネルの 1 本目の芯(R1)の 10 周波数点分の読み取り。
    芯 R1 — 右チャンネルの 1 本目
  • 測定器の画面の写真。右チャンネルの 2 本目の芯(R2)の 10 周波数点分の読み取り。他の三本より約 6.5 ミリオーム低い芯です。
    芯 R2 — 他の三本より低い芯。左右差はここから来ています
  • 測定器の画面の写真。ケーブルをつないだ左耳の 10 周波数点分の読み取り。単位はオーム。
    ケーブルをつないだ左耳 — ここでの単位はオーム(ミリオームではない)
  • 測定器の画面の写真。ケーブルをつないだ右耳の 10 周波数点分の読み取り。単位はオーム。
    ケーブルをつないだ右耳 — ここでの単位はオーム(ミリオームではない)

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