測定 — Chorrang! のケーブルの測り方
測定器、方法、限界まで載せています。四端子抵抗測定、インピーダンスと周波数の関係、そして意図的に公表しない数値の理由まで。
何を測るか
導体抵抗と完成品抵抗は、四端子(ケルビン)測定で 20 ℃換算です。完成品はコネクタを含んだ状態で測り、複数本の平均として載せます。最も良い一本を載せることはしません。
インピーダンスと周波数の関係は、ケーブル単体とイヤホン+ケーブルの組み合わせの両方について、据え置き型の LCR ブリッジを四端子(ケルビン)接続で測ります。テストリードの抵抗は表示値から差し引かれます。この測定器については、メーカー名や型番ではなく、どこまで読み取れる器かという書き方をします。10 Hz から 40 kHz まで 10 周波数点のリストスキャン、基本確度 0.05%、6½ 桁表示、抵抗は 0.001 mΩ まで読み取れます。他社の社名や型番をこのページに書くと、推奨、またはこちらが測っていない比較に読えるため、書きません。
このサイトのどの数値も、試聴を根拠にはしていません。数値がイヤホンに依存する場合はどのイヤホンかを、治具に依存する場合はそのことも、同じページに書いています。
インピーダンスと周波数特性:実測例
ケーブルとイヤホンは分圧回路を構成します。伝達関数は
H(f) = Z_ear(f) / [ Z_ear(f) + Z_line(f) ]
で、インピーダンスはいずれも複素数、出来上がった特性は 1 kHz を基準にした相対値として表します。
ある組み合わせで実測したところ、レベルの低下は 1 kHz でおよそ 0.27 dB、周波数どうしのばらつきは ±0.14 dB の中に収まりました。これは帯域全体にかかるレベルの低下で、音色の変化ではありません。測定ごとのばらつき、芯ごとのデータ、グラフ、そして測定がカバーしている範囲まで載せた研究記事として、ケーブルは音を変えるのか?実測で答えを出しました を公開しています。
過去にこのページへ載せていた数値なので、黙って書き換えたりはせず、訂正として書いておきます。
- 2026 年 11 月 4 日の測定は、10 Hz から 40 kHz まで 10 周波数点を、いずれも表示値と照合しながら測りました。前の回では、15 kHz の測定点が 15 Hz に設定されていました。そしてこのページには「15 kHz でイヤホン自身のインピーダンスがピーク(|Z| ≈ 14.6 Ω)」という記述がありました。あのピークは設定を誤った点の読みで、低域のインピーダンス上昇を高域の出来事として読んでいました。15 kHz を正しく測るとイヤホン自身のインピーダンスは約 5.4 Ω で、曲線は 10 Hz から 20 kHz までピークなく下がります。
- 同じページに挿入損失約 0.30 dB と 15 kHz 付近のピークが載っていましたが、どちらも撤回した回の数値です。あの回の数値はこのサイトからはすべて下ろしました。
「ケーブルのインピーダンス」を単一の数値で書いてもほぼ何も語らない、という点は変わっていません。このケーブルではループの抵抗が 1 kHz で約 0.243 Ω、20 kHz で約 0.44 Ω まで増え、そしてそれが信号に対してどのくらいの損失になるかは、組み合わせるイヤホンで決まります。実測した組み合わせでは 1 kHz で約 3%、20 kHz で約 8.5% でした。
この数値の出所。 2026 年 11 月 4 日に、量産前の Purity の試作ケーブル 1 本と、実験室の基準イヤホンで測ったものです。生産品を測ったものではありません。方法と物理はそのまま引き継がれますが、数値は生産ロットで測り直し、そのロット自身の数値として仕様表に載せ直します。
意図的に公表しない数値
静電容量(pF/m)とインダクタンス(µH/m)。 これだけ短いケーブルでは、卓上 LCR メータ自身のリード残留のせいで静電容量が負の値として読めます。インダクタンスも 10 Hz〜14 kHz の範囲で、戻り経路・よりピッチ・治具によって動きます。一つの数値として公表することは、再現性のない意味のない数値を公表することになります。正しく測るには遮蔽治具、開回路/短絡補正、インピーダンスアナライザが必要で、プレーヤーとイヤホンの間につなぐケーブルに対してそれは釣り合いが取れていません。
他社製品の数値を宣伝文に書くこと。 同じ方法を両側に適用して初めて、比較は測定と呼べます。そうなったら報告書に条件とともに載せる話で、宣伝文に載せる話ではありません。
これから測るもの
- 生産ロットの完成品抵抗。それが済むまで、仕様表の数値は「導体構造から決まる規格値・未実測」と明示したままにします。
- インピーダンスと周波数特性の結果を、機械可読なデータとして載せ、図はそのデータから生成すること。2026 年 11 月 4 日の回については完了しました。 数値は
data/research/cable-sound-20261104.yamlにあり、研究記事のグラフはそのデータから生成しています。同じ測定を生産ロットでやり直すことはまだ残っています。 - 個体差。同じ製造条件の複数本のばらつきとして載せるつもりです。たまたま良い一本の読み値は載せません。